故、福田実さん(前福田組社長)とお話をしたとき、
「仕事でもスポーツでも、
その人が持ってる力を最大限に発揮してもらいたいときに
どんな言葉をかけてあげるのが一番いいのかな?」
こんな話題になりました。
福田さんは、言葉遣いにも大変気を配り、
自分の考えも交えて丁寧にスピーチをされる方で、
そのスピーチの素晴らしさは、
社内外からも注目されるほどでした。
上記の疑問は、確か新潟県陸上協会の会長に
就任されて間もない頃。
社長室で、そんな疑問を投げられたとき、
私は、すぐに適切な言葉を思い浮かべることが
できませんでした。
…すると、続けてこんなことをおっしゃいました。
「外国の会議では、開式のスピーチで司会者が、
さあ、みなさんも会議をエンジョイしてくださいって言うんだよね!
つまり、そういうことなんじゃないかと僕は思ってるんだ」。
「…そうですね、私もいままで気づきませんでしたが、
そのエンジョイは、キーワードになりそうですね」
私は、福田さんの疑問の意図が
ようやく分かりかけてきました。
当時の福田さんは、
社員の心の充足度(満足度)について
強い関心を示しておられました。
ですから、こういう場合に日本人が普通に使う
「ガンバレ」という言葉に対しても、非常に慎重なのです。
「ガンバレ」という応援メッセージは、
選手(当事者)の心にどれだけ強く響き、
モチベーションとなりうるのか。
福田さんと会話を続けていくうちに、
「ガンバレ」について、
疑問や仮説がたくさん出てきました。
・「気合いを入れていけ」ということか?
・「絶対に勝てよ」という命令形か?
・「あなただけを応援してるよ」という周囲の気持ちか?
・選手と1対1のときに言うときと、
開会式で大勢に向かって言うときとでは
多少ニュアンスが違ってくるのではないか?
・なぜ試合の当日によく使うのか?
・緊張でガチガチの人にも「ガンバレ」でいいのか?
・どちらかというと、試合前日までに頑張るべきなのではないか?
・外国人はどんなふうに激励するのか?
・「結果を残す」ことだけがスポーツの意義か?
・応援の目的は、最善を尽くしてもらうことではないのか?
・応援と言えば、どこでも誰にでも一律に「ガンバレ」でいいのか?
こう考えていくと、「試合当日」に限っていうのなら、
選手を激励するにふさわしい言葉は、
やはり「Enjoy」ではないか?
福田さんとそんな結論になりました。
ちなみに、エンジョイを和訳すると「楽しむ」ですが、
そもそも、スポーツでも会議でも
エンジョイするためには「全力を出し切る」のが
前提条件となります。
全力を出して負けたのなら、
それは自分の実力が相手よりも劣っていた証拠。
試合結果に対して、自ら納得した心までが、
スポーツをエンジョイすることだろうと…。
それが「スポーツの豊かさ」ではないか?
しかし、です。
何も説明をしないままに
「みなさん、スポーツをエンジョイしてください!」
と日本人に言ったら、やはり上記の意図は
伝わらないでしょうね。
「エンジョイ」=「楽しむ」について
辞典で調べると、
「愉快に思う」「好きなことをして喜ぶ」
と書いてあります。
まるで、実力の20%くらいの力で、
疲れを出さないように取り組むことこそが
「楽しむ」ことであるかのような日本語表現。
言い方は悪いですか、何かチャラチャラした
イメージがあります。
しかし、私たちのイメージする「エンジョイ」とは、
もっと心の奥から楽しむということ。
どちらかというと「楽しむ」というよりは、
「堪能する」「満足する」に近いかもしれません。
ですから、あえて「楽しむ」とは言わずに
「エンジョイする」と表現させていただきます。
実際、外国人選手はよく
「オリンピックをエンジョイしたい!」と言います。
しかし、何年も前に元水泳選手の千葉すずさんが
「オリンピックを楽しんできたいです!」と言ったとき、
日本水泳協会から強いバッシングがありました。
普段はアメリカで強化練習していた彼女にしてみれば、
外国人が普通に使う「エンジョイ」を
日本語に直訳して「楽しみたい」と言ったことに
私は原因があったのだと思っています。
言葉を使った方の意図と、
言葉を聞いた方の理解にズレがあったのはないか?
とにかくそんなふうに「ガンバレ」等の話をした後から、
福田さんは社内でも、
よく「エンジョイ」を使われ始めましたが、
大抵は「やり抜く」「出し切る」「本気度」という言葉と
セットにして使われていました。
会議にしても、しっかりと議論をし尽くしてこないと、
とてもじゃありませんが
「会議を楽しんできたよ!」とは言えません。
何度も言いますが、
エンジョイするためには、
本気になってやり抜くことが前提なのです。
…スポーツに話しを戻します。
アメリカ人のコーチは「ベストを尽くして!」
フランス人のコーチは「リラックスしていきなさい!」。
試合までに、本気になって練習してきた人には、
むしろ当日はフランス人のように
「リラックスしなさい!」でいいのかも…。
日本語の「ガンバレ」に相当する言葉を
いろいろと探してみましたが、
こういう言葉しか見つかりませんでした。
ちなみに外国選手の場合は、
宗教の信仰心も少なからず影響してると思ってます。
私がまだ現役時代、外国人選手がやけに
試合前にリラックスしているので、「緊張しないの?」と聞くと、
「だって結果は、神さまが決めることだから」と
言われたことがあります。
試合当日、自分が全力(気力・知力・体力)を出しきれれば
あとは神様が救ってくれるということなんでしょうね。
いずれにせよ、競技スポーツの意義は、
試合に勝っても負けても
その結果を真摯に受け止めて、
さらなるモチベーションアップの原動力とし、
自己成長に結びつけることだと私は思います。
それなのに、試合当日にガチガチに緊張して
自分の思うような結果が出せず、
かえってやる気が失せてしまったのでは、一大事。
受験生にも部下にも、
いつでも「ガンバレ!」一辺倒ではなく、
臨機応変にいろいろと使い分けていきたいものですね。
みなさんもご意見があったら
ぜひコメントください。
充分に「がんばって」いる末期の子ども達や家族にとっては、言われても辛いだろうなあと思います。
「がんばって」って、あいまいで便利ですが、本当の気持ちは伝わりにくそうですね。
URL | いむ #-[ 編集 ]
自らの行動で激励する人は圧倒的に少ないですね。
私や私の家族が入院していたとき、
あなたは遠くの地に住んでいたのに、
いろんな方法で勇気を与えてくれました。
「思いやり」の心をどう表現するか?
あなたから学んだことは多いです。
URL | 管理人 #-[ 編集 ]
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